働き方に制約、限定がないという意味で日本の正社員は「無限定正社員」ともいえますが、そのことで正社員と非正規社員との二極化が進み、様々な労働問題や働きづらさを生み出しています。
「限定正社員」とは、働き方の二極化を緩和し、労働者一人ひとりのワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着を同時に可能とするような、労使双方にとって望ましい多元的な働き方を実現するため、新しい雇用区分として、次の①~③のとおり、職務、勤務地、労働時間を限定した正社員のことをいいます。ここで重要なのは、「限定正社員」といえるためには、原則次の①~③の限定内容以外の労働条件・待遇などについては正社員と同等でなければいけません。また、それらの内容が就業規則等で制度化され、正しく運用されていないと意味がないと言えます。
厚生労働省のHPでは「多様な正社員」という用語が使われています。「限定」という言葉の印象を考慮して「多様な」という表現を使用しているかもしれません。
⑴職務限定正社員
担当する職務内容が限定されている正社員をいいます。
医療・福祉業、運輸業など資格が必要とされる職務、情報サービス事業など高度な専門性を必要とする職務によく使われています。
⑵勤務地限定正社員
転勤範囲を限定したり、転居を伴う転勤をしない正社員をいいます。
育児・介護等の事情で転居が困難な方、地元志向の方に使われたり、全国展開に対して地域重視の事業展開をされる時、エリア社員という区分を設けるなどの方法で使われます。
転勤可能な社員を「総合職」、転勤がない社員を「一般職」と区別しているケースも見受けられます。
最近のリモートワークの発達により、勤務地に縛られない働き方が可能になっていますので、この限定の必要性については各事業所ごとによく検討してみる必要があるでしょう。
⑶短時間正社員
フルタイムの正社員と比べて、1週間の所定労働時間が短い正社員であって、次のどちらにもあてはまる労働者をいいます。1日の労働時間が短い場合と1週間の労働日数が少ない場合があります。
①期間の定めのない労働契約を結んでいること
②時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法が同じ事業所に雇用される同種の フルタイムの正社員と同等であること。
1週間の所定労働時間がフルタイムの正社員と比べて短いという点では短時間労働者と同じですが、上の2つの要件を設けることで短時間労働者と区別されるといってもいいでしょう。
企業内において、このような働き方を就業規則に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。
多様な働き方実現応援サイト(厚生労働省)
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/
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